徒然煮物

知識メモ

メディアは透明になるべきか

要約

 本書は,情報伝達媒体(メディア)を取り扱っており,特に機械から人間へ伝達する際の媒体,インターフェースについてデザイン思想を論じている.まず,インターフェースには,存在を意識できないかできるかという違いに応じて,透明性と反映性の対立がある.透明性の大きいインターフェースでは,伝達される情報のみを意識でき,インターフェースの存在を意識できないインターフェースである.一方で,反映性の大きいインターフェースでは,インターフェースが人間の暮らしの背景(文脈)を反映し,伝達される情報へ新しい情報を加える.例えば,VRとARを比較した時,VRではOculus等を通じて眼前に投影される映像が全ての情報であり,インターフェースは意識できないことが望ましく,透明性が大きい.一方で,ARでは眼前の現実へ映像を重ね合せるため,映像にはその時間・場所という文脈を反映しており,反映性が大きい.
 本書では,インターフェースのデザインを考える上で透明性と反映性のバランスをとることが重要だという論旨のもと,sigraphのデジタルアートを例にとり,反映性を備えた4種類のデザイン思想を述べる.

  • リメディエイト:以前のインターフェースと関連づけて,インターフェースの意味を説明する
  • 多様:デジタルメディア形態の多様性を許容し,一つに収斂させない.
  • 身体化:現実の身体と環境との相互作用を取り入れる.
  • 文脈的:文化的・経済的文脈を取り入れる.

所感

透明な情報はあるのか

 人間は,自分の知識や欲求を前提として,情報を受け取っている.つまり,情報を受け取る際には,常に自分自身の知識という非透明なレンズを通しており,”ありのままの”情報はそもそも存在しないと考えた.

非透明な情報に対する反映性の利点

 反映性には,二つの利点があると考えた.一点目に,非透明なレンズを通した情報の受け取りを効率化する.二点目に,普段は無意識的な受け手の知識や欲求を,意識上に呼び起こす.

その他

 siigraphの作品を解説しており,解釈方法の勉強にもなった.