徒然煮物

知識メモ

今日の季語:夜の秋

つい先日まで暑かったのにもかかわらず、ここ数日少し肌寒くなってきた。「夜の秋」という季語は、どことなく秋めいた感じがすることをいう夏/時候の季語である。
角川俳句歳時記には、

風物の状態はまだ夏であるのに、晩夏の夜など、どことなく秋めいた感じがする。このような情趣をいう季題である。

とある。
秋の夜という秋の季語もあるが、夜の秋はあくまでも夏の中に秋の寂寥とした感じを詠むのではないかと捉える。このような時候の季語は、ともすれば叙情に流されがちでとても難しい。

涼しさの肌に手を置き夜の秋 高浜虚子

句の頭に「涼しさの」と来る。縁側に出て涼しさを感じたのだろうか。肌というのは隣にいる奥さんを想起させる。肌に手を置いた後、二人でぼんやりと秋の気配を感じているという静かな句に読めた。


足音が少し響いて夜の秋